1999年 スイス ドイツの旅 5


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  9月17日 (金)
   9時、駅前で観光バスを待つ。50もの古城や廃城が残る古城街道ツアー(ハイデルベルクからローテンブルクまで)に
  申し込んだ。ネッカー川を右手にバスは走る。広い川面からもうもうと靄が湧き上がっている。なるほど城や城塞が沢山ある。
  現在も使われているところが多い。車内放送は英語と日本語。通る町の簡単な紹介をしている。ブローンバッハでティータイム。
  白い窓枠にこげ茶の斜交い。中世風の木組みの美しい通りだ。ローテンブルクに着いたのは1時少し前。
   ローテンブルク駅前からアンスバッハ通りを行くとレーダー門がある。他にも幾つか門があり、ぐるりと城壁が巡っている。
  城門を一歩入ると、中世のおとぎの国。中世風の家並に緑の植え込みと花。突き当たるとマルクト広場。市庁舎の立派な建物に
  時計台。11時から3時まで、毎時人形が出てくるという仕掛け時計だ。市庁舎の裏手を回ってくるとちょうど2時。大勢の人が
  時計を見上げていた。左右の窓が開いて、左にラッパを吹く将軍が、右の窓にワイングラスを持つマイスタートルンクがいる。
  グラスの手を動かして何杯も飲んでいる。バスの中での説明によると、この町は襲撃され、あわや陥落という時、市長がワインを
  差し出した。将軍は樽のワインを飲み干したら、町を助けてやると約束し、市長は樽を飲み干し、3日3晩眠りに落ちたが、命も
  町も救われた。おとぎ話のようでホットする。他の通りも歩いてみる。シュピタール門に出た。ここも木組みの家や花壇の花々が
  美しい。そこから城壁の上を歩いて中心地に戻った。
   5時45分、ロウテンブルク発の列車で、アウスブルクには6時50分に着いた。すぐにトラムで旧市街の市庁舎広場で下り、
  市庁舎へ。やはり10時から6時までだ。「黄金の間」が見たかった。
  

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  9月18日 (土)
   9時3分発アウスブルクからフュッセンに行く。途中の Buchloe には9時38分着で乗り換え。Buchloe に着く時、車内アナウンス
  があったが、我々には意味不明。時刻表通りのホームで電車を待っていた。乗客はみな向こう側のホームに移動し、こちらを見て
  いる。全く一瞬だった。離れたベンチの人が立ち上がって何やら叫ぶ、我々も「目の前に線路がない」ことに気がつく、一人の青年が
  息せき切って階段をやってくる、ほとんど同時だった。若者はまっしぐらに我々に近づき、私の荷物を持ち、地下道を抜け、みんなの
  いるホームに連れて行った。そこに列車は入って来た。お礼をいう間もなく、彼は放り出してあった自分のかばんを手にすると、人
  込みと共に乗り込んで、わからなくなってしまった。我々は1等車だったのでフュッセンに着いて、若者を探したが見えなかった。
  心に深く深く残る出来事だった。
   フュッセン駅前からバスに乗る。ノイシュバンシュタイン城が山岳を背景に浮かび上がっているのが、麓のバス停から見えた。
  この辺り一帯はバイエルン州でもオーストリアとの国境に近く、森と湖の多い山岳地帯である。「バイエルンの国王ルードヴィヒ2世が
  17年の歳月をかけて築城したもので、中世の童話に出てくるようなファンタジックな城、ディズニーがシンデレラの城を作る時に、
  モデルにした」とガイドブックにはある。自身は築城後3ヶ月で謎の死を遂げたという話も、旅人には美しさの上になにやら畏怖を感じ
  させる。先ず城の手前の坂道から振り仰ぐ。正面に回り、順番を待って中に入る。誠に贅を尽くした豪華な部屋部屋だ。ワグナーを呼んで
  演奏会を開いたという。どの部屋からも広大な風景が見える。城内見学の後、裏手を5分ばかり歩いた。マリエン橋からまた眺める。
  城の向こうはのどかな山麓と湖。白い壁、グレーの屋根、尖塔、「新白鳥城」という名のごとく、大きな白鳥が森の中に威儀を正している
  姿に似ている。谷から湧き上がる靄に首と羽だけ見れば、今まさに飛びたつ白鳥の姿にも見える。
  また表に回ったが、木立が邪魔して、絵はがきのようにカラフルな姿はとらえることができなかった。(中略)


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   4時45分発、フュッセンからミュンヘンへ。2時間の距離である。
  ミュンヘン中央駅のすぐ前、エデンホテル。
  今日はオクトーバーフェストの幕開け。タクシーで会場のテレージェンビーゼ広場に
  行った。巨大遊園地と化している。ジェットコースターなど迫力あるマシーンが
  幾つもある。各所で若者たちの絶叫が聞こえる。度肝を抜く乗り物に安全対策は
  大丈夫か、見ていても不安になる。
   アイスクリーム売り場、ソーセージ売り場が沢山ある。土産物店はライトを輝かせて、
  大きなハートのチョコレートをいっぱいぶら下げている。さてお目当てのビアホール。
  メーカー特設のホールが何か所もある。入ってみて驚いた。体育館並みのホールに人は
  溢れ、入り込む隙間は全くない。2番目に入った所の、2階の隅のテーブルに辛うじて2人

  座れた。中程の演奏も指揮者の手振りだけで全然聞こえない。喧噪の渦である。
  若者が多いが、中年も女性もいる。大声で何を語っているのだろうか。ビールとコーラを注文する。ビールは全部巨大ジョッキだ。
  前の席の人はオーストリアから来たという夫婦と母親。皆大ジョッキで乾杯している。ここのウエートレスは凄い、片手に大ジョッキ
  4個持ってくる。(後略)(紀行文 スイス ドイツの旅より)
    

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